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死亡診断書の書き方

  • 執筆者の写真: Shinichi Shimadera
    Shinichi Shimadera
  • 2021年9月29日
  • 読了時間: 0分

人間には生まれてから死ぬまでに三つの時刻に出会うという。そのうち二つは医師が定めるとされる。出生証明書と死亡診断書、とりわけ死亡診断書はその方にとって最期の診断書なのでいつも緊張する。なぜならそこに書く診断名は統計に載るからである。

研修医の頃、心不全、呼吸不全は書かないようにと教えられた。なぜなら全ての人が最期は心不全か呼吸不全で亡くなるからである。心筋梗塞を起こした方が心臓が止まって心不全状態となって亡くなる場合、死因は心不全ではなく心筋梗塞となる。肺がんが進行して呼吸が苦しくなって亡くなる場合、死因は呼吸不全ではなく肺がんとなる。

しかし新型コロナが流行り始めて、この死亡原因診断が狂い始めている気がする。新型コロナ陽性と判明した方が自宅療養中に脳梗塞で倒れた場合、救急要請をしても、もし受け入れ先が決まらず脳梗塞の処置が手遅れとなって残念にも亡くなられた場合、死因は何にすべきか。新型コロナ感染症か脳梗塞か。もちろん新型コロナウイルスは体内にいるが、直接の死因に関わったのは脳梗塞であるはずである。状態の悪化は決して新型コロナ肺炎ではないと思われる。ただし、手遅れで病院にたどり着いた場合、様々な病態が複雑に絡み合って、何が原因で何が結果で、何が副損傷か分かりにくい。今どのくらいの医師がこのような状況で正しく死因判定ができているのか。誤って新型コロナ肺炎が水増しされてはいないか、心配である、という論調で一部の報道、SNSでは言われている。

実は今、聴診器が変わりつつある。Bluetooth聴診器、つまり無線の聴診器が出て来ている。感染対策のために聴診するのに顔は近づけない。中にはパルスオキシメーターのみで、聴診すらしない。そんな医師も出てきている。肺炎があるかどうかはCTを見ないと分からないとか、感染対策だからディスタンス第一だとか、触らずとも診断出来る時代だとか。そんな頭でっかちで本当に診断が出来るのか?正しく処置が出来るのか?

死亡診断書に書く一番目の診断名欄には「直接死因」と書いてある。私はやはり患者さんに直接触れて、手当てをして、最期の診断名を書きたいと思う。直接死因が「患者に触れなかったこと」と後世まで言われないためにも。

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