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小児外科の国際学会

執筆者の写真: Shinichi ShimaderaShinichi Shimadera

Shimadera, pediatric surgery(小児外科)とGoogleで検索すると、小児外科関連の色んな英語論文が出てくる。その中で私の名前が一番左に出てくる論文はかつて私が書いたものである。あの時は一生懸命研究していたな、と懐かしく思い出す。

私が所属していた京都府立医科大学大学院小児外科学では博士号を取るためには雑誌掲載の英語論文が必須であった。そのため国際学会で発表し、論文にして、それが英文雑誌に掲載される必要があった。

私の最初の国際学会での発表は年に一回開催される英国国際小児外科学会であった。そこでの発表はポスター発表で、しかもプレゼン時間は1分間。その1分のためにはるばるアイルランドの首都ダブリンまで行った。

国際学会と言えば当然発表は英語、質問も英語、答えるのも英語である。発表は原稿を読めばいいので少しは気が楽であるが、問題は質疑応答である。

日本人は英語が下手であると英語圏の人から蔑んで見られていると一瞬誰しも思う。でも少し触れれば分かることだが、皆お国が違えば、話す英語が違う。正確には違って聞こえる。つまり訛りがある。例えばフランス語訛りはあまり口を開けずに喉の奥で曇ったような英語、イタリア語訛りはピザーラ、カルボナーラとイタリア料理の羅列みたいに聞こえる。日本語訛りはと言えば、抑揚のないボー読み英語である。そんな中でやはり英国人の英語は綺麗だった。アメリカ人よりも発音が堅実で聞き取りやすい。何だか紳士の英語というイメージだった。

話は反れたが、国際学会では日本人は一つのチームとなる。小児外科医と言えばどの国でも少数派である。おまけに国際学会に出ようという小児外科医はさらに少なくなる。ネイティブの英語に苦労しているのは皆一緒。夜は時間が合えば是非食事をともにしないかと誘い合う。一緒にフラメンコを見に行ったこともある。ヨーロッパの方々から見れば日本は極東(Far east)で、そんな遠いところからはるばるよく来たなと皮肉を言われる。そういう位置付けの我々は徒党を組んで敵地に来たようなものである。

発表の場ではスピーカーのボリュームの関係か、Speaker(話し手)の発音の関係か、はたまた時差ボケの関係かで、相手の発音が聞き取れないことも多々ある。緊張で手に汗握るとますます分からなくなる。そんな時は自然と誰かが手をあげて、今のはこういう質問でしたよ、日本語で教えてくれる。そんな時は英国人座長は、「Nice Japanese Samurai spirit」と褒めてくれる。

こんなことを言われたこともある。なぜ医療が進んでるはずの日本からは貴重な全国データが毎年世界に向けて発表されないのか、と。つまり世界は保険医療が進んでる日本から、なぜこんなにも発表が少ないのかと思っているわけである。答えは簡単、日本人は英語が苦手だからである。しかし、世界は日本からの発信を待っている。期待されてるのにその期待に応えようともしない。いや、もっと言えば期待されていることすら知らない。そんな恥ずかしい思いをした時にすかさず英国人は、「分かった、俺が日本語を勉強するよ」と言ってくれる。どこまでも英国人は紳士である。

先程、「敵地に乗り込む」と言ったが、英語圏は決して敵地ではない。敵地と思っているのは、日本人の心がまだ鎖国をしているからかも知れない。これこそ本当の「井の中の蛙」。早く世界を知らなければ。

ところで、なぜ日本人は英語が苦手なのだろうか。なったの26文字にこんなに手こずるとは。拙者の不徳の致すところである。

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