新型コロナがとうとう五類感染症になった。五類はインフルエンザ程度と軽く考えがちだが、五類は他にもアメーバ赤痢、劇症型溶連菌、破傷風などの死亡率の高い怖い感染症も含まれている。決してかかっても平気という疾患ばかりではない。それを思うと感染予防のためのマスク着用は今まで通りで良いのではないかと思ってしまう。
マスクは今年三月から任意となった。つまり付ける付けないは個人の自由ということになり、また文科省は学校での着用を求めない方針を打ち出した。そんな基準でマスクの可否が正しく判断できるのだろうか。
私は今、仕事中はマスクを付けていて、仕事以外ではマスクを外して街中を歩いている。コンビニもショッピングモールも電車内も。その判断基準はコロナウイルスと接触する確率である。仕事上、医師として患者さんと対面する。患者さんとは症状のある方をいうので、新型コロナを含めて病原菌を保菌している可能性が高い。それゆえ、マスクは感染対策として着用している。その主な目的は自分がかからないためである。
外では今は新型コロナの患者さんの比率が低い。元気な方はほとんどウイルスを保菌していないと推定される。そのため私は敢えてマスクは外している。咳などの症状がある時は着用する。また、途中で外したマスクをポケットに入れる時は必ず外側を内側に折りたたんで入れる。絶対にマスクの外側は触らない。なぜならそこには病原菌が付着している可能性が高いからである。このように可能性で考えれば全ての行為に納得が行きやすい。
そもそも何故コロナ禍では常時マスク着用が推奨されたのでしょうか?それは「無症状陽性者」という言葉が尾身会長により発言されたからです。新型コロナが流行し出した当初、人類は感染予防策が分からなくなってしまい、潜伏期間が2週間もある中で、いち早く感染者を見つけて隔離したい一心で無症状者にPCR検査を導入してしまった。無症状な状態ではウイルスの数も少ない。そんな状況でウイルスの断片を増幅して検査したところでピンぼけ写真を見ているようで、到底正しい判断が出来るとは思えない。にもかかわらず、それで陽性となった方は隔離された。そんなふうに大きな網で捉えないとこの新型感染症は対処出来ないと思われていたから仕方ない。でもこの無症状陽性者から本当の感染者になる割合はざっと3割である。この3割を隔離するために残りの7割は偽陽性となった訳である。
話は変わって、街で会う幼児は何故かマスクをしていない比率が高い。していてもほとんどが鼻出しマスクになっている。コロナが流行し始めた2020年は10歳未満の感染者は稀であった。診療の場でも小児外科手術がコロナ感染で飛んだことはほとんどなかった。そのせいかコロナ禍においては子供にマスクをさせることの害悪が前面に出され、いつしか子供はマスクをしなくても良いと思われてしまった。でも実際は昨年一月から流行しているオミクロン株は乳児も幼児も感染し、そこから家族内の大人、高齢者に広がったと言っても過言ではない。つまり今や子供から広がる構図になっているにもかかわらず、子供には何故かマスクを付けないことを容認している。
私からすればむしろそれは良かったと言いたい。確かに子供は正しくマスクを着けることが難しい。鼻水やヨダレが多い子はすぐにマスクが濡れて、それを着け続けると呼吸困難になる。それを避けるために鼻出しの比率は大人よりも多い。マスクの内外の区別も分からないし、到底正しく着用出来るとは言い難い。
「子供は風の子」と言うように、寒くとも子供は平気で外で走り回っているものである。基礎体温が高く、免疫力が活発で、色んな雑菌、ウイルスを貰いまくって、鼻を垂らして撒き散らして、そして相乗効果でさらに強くなる。そういう生き物であったにも関わらず、コロナ禍では自粛、自粛、マスク、マスク、と連呼された。お陰で免疫力は地に落ち、最近40度近くの不明熱が多発して、外来がてんてこ舞いである。
コロナ禍ではマスクは自分の為ではなく、他人の為に付ける思いやり、とまで言われた。そのせいでマスクをしていない人は信用できない、近づくな、みたいな風潮が出来てしまった。
日和見感染という医学用語をご存知か。免疫力の落ちた高齢者などが日常の弱毒なカビや雑菌、ウイルスが原因となって高熱や肺炎になって死に至ることもある感染症のことをいう。若い人でも菌を浴びないと免疫力は鍛えられない。この3年間のマスク生活で子供の免疫力は落ちていることはどうやら間違いないみたいである。だとすれば大人も早くマスクを外して、少しずつ雑菌を浴びて免疫力を高めに入らないと、うっかりかかった感染症で寿命を縮めることにもなるかもしれない。これも含めて「任意」であることを自覚しないといけない。
若者よ、早くマスクを取れ。鼻出しマスクでお茶を濁している場合ではない。またパンデミックになったらまたどうせ付けなければならなくなるのだから。
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