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プリパレーションの効果

執筆者の写真: Shinichi ShimaderaShinichi Shimadera

インフルエンザのワクチン接種が始まっているが、「何も言わずに連れて来たのです」という話を時々診察室で聞く。中には先生から話してくださいという親さんもいる。おそらくその裏には、正直に話すと暴れてとても連れて行けないから、という事情があるのかもしれない。

では何も知らない(聞かされてない)子供さんが診察室に入って取る行動はと言えば、「何をするの?」「注射するの?」の質問の嵐。そうだよと言えば、「いやだー!」と案の定、暴れて診察どころではない。親さんは打ってほしいから、結局何人かの大人で抑えて打つことになる。それは本当に正しいのだろうか?ワクチンは任意だから同意なしに抑えて打つものではない。きちんと診察をして、リスクのないことを確かめてから打つ。無理やり打って、その後死亡事故を起こした話もある。

実は私が乳児の時から定期ワクチンを打ってる子供さんは、全員ではないが、暴れない。3歳にもなれば一人で座って、腕を出して(ミッキーのポーズと呼んでいる)、痛くないおまじないをして、打たせてくれる。小学生にもなると、「今日のはちょっと痛かったな」と冷静に評価してくれる。私の「痛くない注射」が分かっている子は、親さんから「今日先生ところに注射に行くよ」と言われて、本人納得で来てる場合がほとんどである。これは上手くいってる例だけなのかもしれないが、逆に何も言わずに連れて来られて、クリニックの物々しい雰囲気に入って、それでも何も言われず、診察室に入って、突然巨人に囲まれて、針がこっち向いて刺さってくる訳だから、暴行に近い。

「巨人」というのは小児科でよく例えられるのだが、20kgの子供を50kgの大人が抑える状況を自分に置き換えれば、50kgの成人を125kgの人が抑えるのと同じで、それはまさしく巨人に見えるだろう。そりゃ誰でも怖くなる。

プリパレーションとは心の準備のことで、こういうことが起きるよ、でも大丈夫だから、お母さんも一緒に着いて行くから、と子供さんを安心させてあげる最大の方法だと言われている。言うと暴れるからは大人の理屈で、本当は納得いくまで説得しないといけない。そこに信頼が生まれる。

反抗期は親への信頼の証という。この親なら反抗しても許してくれるという安心感らしい。小さい頃に暴れる子は思春期に暴れない。小さい頃暴れない子は、思春期暴れる。どっちも暴れない子は親を信頼していない、という説がある。

「嘘も方便」というようにあらゆる方便を使って親は子を育てる。時には罪をかぶって。そんな毎日の積み重ねの上に自分たちは大きくなったことを忘れてはならない。

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