新型コロナとマスクは今や切っても切れない関係になって来た。しかし第一波の時からマスク着用に感染予防効果は無いとしきりに力説する人達が一部にいる。では実際にどうなのかを統計学的に計算式で検証してみよう。
まず第一に新型コロナの感染率だが、ファイザー社からの報告ではワクチン接種なしの1万人中約100人(1%)が感染したとされる。これは武漢型のアルファ株のデータである。現在のオミクロン株はその感染率は約10倍として、ワクチンなしでは1万人中1000人(10%)が感染するとする。つまり非感染は9000人。これをマスク着用ありの1万人と比較する。仮にマスク着用でマスクなしの10分の1(1%)に感染率が下がるとすると、感染者は100人、非感染は9900人となる。
しかしながら、ここに正しくマスクを着用出来ていない人が1/4(2500人)いるとすると、その人たちは感染率は無着用と同じ10%が適用されて、感染者は250人、非感染は2250人になる。残る正しいマスク着用者7500人の内訳は、感染者75人(1%)、非感染7500人となる。それを合計すると、マスクありの群は感染者325人、非感染9775人となる。ここからはファイザー社と同じ解釈で計算をする。マスクをすることで助かった人は1000-325=675人、これをマスクなしでの感染者1000人で割ると、マスク効果は67.5%という計算になる。この67.5%をどう捉えるかではあるが、マスクを正しく着用していない人が1/4いれば、集団のマスク効果は1/4よりも下がると言えるでしょう。つまり自分勝手でマスクを正しくつけない人はそれ以上に集団の足を引っ張るとも言えるでしょう。
2020年新型コロナ流行初期は日本は諸外国に比べて格段に感染者が少なかった。その理由を日本人はマスク着用者が圧倒的に多いからだと賞賛された。ところが今世界で最も感染者が多いとされ、その理由があの時日本は感染者が少なすぎたから集団免疫が出来ていないのだと皮肉を言われる始末。ワクチンだって6-7割が打てば集団免疫が出来てコロナは終息すると散々言われて開始したが、結果はこのありさま。
ただ、統計は数字のマジックだからどうにでも印象操作することができるので、注意しないといけない。
ところで、正しいマスク着用とはどの様なものかと言えば、鼻と口を覆う位置で着用し、布マスクやウレタンマスクよりも不織布マスクが良いとされ、鼻出しマスクはダメ、マスクの外側を摘んで上げるのもダメ、飲食のために一瞬あごマスクにするのもよく目にするが、これもあごにずらした瞬間にあごから首にかけて付着しているウイルスをマスク内側にくっつけることになり、それを戻すと口からウイルスが入ることになり、当然ながら不適切となる。そう考えると、正しいマスク着用を保つのは本当に難しいことが分かるだろう。「人は易きに流れる」正しくないマスク着用が増えることでマスクの効果が薄れていくことは間違いない。鼻出しマスクをするくらいなら潔く付けない方がましということになる。
さて、話は長くなったが、様々な反省から当院では発熱外来の診察室、検査室の換気扇を大きくした。それはおそらくこの新型コロナの感染防護にはマスク以上に換気が重要と考えるからである。それはマスクが無意味という意味ではない。「マスクは着けるなら正しく、換気は風を感じるほど十分に」と医療現場としては思う。
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