新型コロナが流行し始めて早二年半。感染対策の名の下に個々に様々な行動変容が求められるようになった。医療者としてマスクは以前からしており、アルコール消毒も別に苦ではない。小児科として感染症の診察は常であり、密かに私はこの未知なるウイルスがいつかは流行すると思っていた。ただ、こんなにも重装備で診察をするとは思っていなかったが、標準予防策を考えれば当たり前かも知れない。
そう、当たり前のことを当たり前にする、このことは意外と難しい。
感染対策としての重装備は帽子、手袋、マスク、フェイスシールド、ガウンである。これを着て発熱外来では診察をする。ところが、発熱外来から非感染の診察に戻る時はこれを全て脱ぐ。再び発熱外来に戻る時はまたこれを装備する。この繰り返しはかなりのストレスではある。自分が汚染しないように細心の注意を払うため体力も奪う。コロナ前まではゆったりした気持ちで働いていたのが、このコロナで一気に変わってしまった。この行動変容に馴染めないスタッフは、もしかしたらもう疲れてしまって士気が下がっているかも知れない。実際のところ、現場ではそんな不安とも戦っている。
ある時、これはコロナ前であるが、ある社労士に指南を受けたことがある。「スタッフは変化を嫌う。院長の思いに沿って、与えられた給料以上の働きを示すスタッフがいればそれはかなり優秀である」と。
確かに就職して間もない新人ならまだしも、ある程度経験を積んだ人なら自分の働き方を知っているし、限界も知っている。向上を求めれば、それがストレスとなり、ハラスメントとなることもある。このコロナはそれを二分する出来事であった気もする。つまりは馴染める人と馴染めない人。行動変容が出来る人は勝ち残り、出来ない人は篩にかけられ落とされていく。
さて、年齢を重ねれば行動変容は出来なくなるのか?消化器外科をやっていた時代、胃全摘の患者さんが最初は新しい食習慣に慣れずに癇癪を起こしておられたのに、徐々に慣れて元気に食事を楽しんでおられる姿を見て人間は素晴らしいと思ったものである。
行動変容が不得意な人は沢山おられるが、目標に向かって自分が出来ることがどんどん増えることを嫌う人は一人もいないはずである。その向上心が行動を変化させる。行動変容の本質は向上心なのかもしれない。
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