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PCRと抗原検査の感度の差

執筆者の写真: Shinichi ShimaderaShinichi Shimadera

更新日:2023年3月18日

「家でコロナの抗原検査をしたらうっすら陽性が出た。職場に相談したら医療機関に行ってPCR検査で確定診断を受けるように言われた。」

最近このように言って受診される方を時々経験する。抗原検査よりもPCR検査の方が感度が高い、より正確だと思っておられるのか。診察の現場ではなかなかゆっくり説明することができないので、この場を借りて説明しましょう。結論から言えば、抗原検査もPCR検査も感度の差はない。また陽性が出た場合の正確性は抗原検査の方がある。それよりも検査の適用誤差、手技による誤差、タイミングによる誤差の方が大きい。

感度がいいと思われているPCR検査だが、世に発表されているデータでは感度70%、特異度99%とされている。その検査をある集団(人口10万人あたりの感染者数237人)に適用してみたところ(添付資料を参照)、真の陽性①237、偽陽性③997、偽陰性②102、真の陰性④98,664となり、陽性的中率(①/①+③)=19.2%となる。つまり残りの80.8%(997人)は元気ピンピンの検査陽性者ということになる。つまり安易にPCR検査を受けるべきではないとも言える。ただし、陰性的中率は99.9%であり、検査で陰性ならば本当に陰性である確率は高い。しかし実際は偽陰性は0ではなくこのデータでは10万人あたり102名もいることになる。真の陽性237名、偽陰性102名の比率を新型コロナ感染に当てはめてみれば、実にコロナ感染者の1/3は見逃されることになる。当然ながら感染症は1人病人が発生すればそこから伝染して増えていくので、東京オリンピックのバブル方式(事前検査陰性者のみの集団を包むこむ構図)は夢のまた夢であったことが分かる。それどころか感染症の大家はPCR検査を陽性陰性の振り分けに使うことは禁ずるべきだと早期の段階で言っていたのはこれが理由である。

さて、高々感度70%のPCR検査だが偽陽性者を減らす方法がある。それは検査の対象者を絞ることである。つまり発熱などの症状のある方のみに絞るとその集団の有病率は上がる。先の検査は令和3年8月21日の東京都の発表データ集団であるが、その有病率は0.237%、これを発熱者100人だけに絞り、コロナ疑いが濃厚と思われる集団をピックアップし、例えば有病率50%で想定すると、真の陽性35、偽陽性0.5、偽陰性15、真の陰性49.5となり、陽性的中率は98.6%まで上がる。つまりこの絞り込みを真剣にやっていたのがコロナの第一波のクルーズ船の時の加藤厚労大臣である。あの時マスコミは「なぜクルーズ船の乗客全員にPCR検査をしないのか」と騒ぎ立てたが、それこそ愚の骨頂、無知をさらけだすことであった。「検査は有症状者の病気を確定するためにある」この感染症の大原則は今も昔も変わっていないはずである。

先の議題に戻って、「うっすら抗原検査で陽性は追加のPCR検査で陽性を確定すべきかどうか」ということだが、PCR、抗原検査ともにウイルスの一部を引っ掛ける検査なので、抗原検査で陽性はPCR検査を追加するまでもなく陽性である。逆にPCR検査で陽性ならば偽陽性の確率が高いので、「抗原検査を追加して本当に陽性か確認して来い」と職場の上司がもし仰ったらそれはかなり造形の深い方と言える。というのも、PCR検査の偽陽性は死んだウイルスの断片だと言われているからである。PCR検査、抗原検査ともにウイルスの断片を引っ掛ける検査である。その点では共通なのだが、PCRはその断片を複製して増幅させて検査をするという特長があり、それが時に諸刃の刃となる。その増幅したものが活性を持たないウイルスのゴミだとしたらどうでしょう。どんな検査でも取った検体の適正度と有効性がある。新型コロナは咽頭で増えます。増えてる状態のイキイキした検体を取らないと適切な検査はできない。

「鼻の奥につっこむのは痛いから手前を取った」それは本当に正しい検体ですか?その前になぜ検査をしたのですか?症状はありますか?無症状なら検査の精度が落ちるのですよ。今政府は医療機関の崩壊を防ぐために新型コロナの無料検査場を作ったり、検査キットのネット販売を許可したりして個人で自宅で検査をするように勧めている。この動きは一見正しいように思えるが、検査を受ける側がどこまで検査について理解しているか、正しい手技ができているかは無視されているに等しい。医療機関でも子供の検査は「お母さん、やってください」などと伝えているところもある。

当院では検査の精度を上げるために検査対象を絞っており、より正確なタイミングで、より正確な手技で抗原検査のみを行っています。偽陽性が多く、結果までに時間がかかるPCR検査は原則勧めません。そのことにご理解とご協力をお願いします。



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